③うまく歩けなくても

 今日は3月並みに暖かい快晴で、バギーに乗ってのんびりお散歩をした。子どもの頃から毎日遊んだ、家から少し離れた大きな公園を、降り注ぐ陽光の下でゆっくり巡った。歩きやすい平らな場所でバギーから下ろすと楽しそうに歩いた。
 
 昨日から庭猫親子のドタバタがつづいていて、ボニーと過ごす時間がいつもより少なかったせいもあってか、ボニーはつまらなそうだった。ぼくや家族の気落ちを察して、けっして怒って吠えたり、また甘えたりはしないのだけれども、表情にはよく出ていた。だから公園でバギーから降りたときは、最近では珍しいくらいに勢いよく歩き出した。
 
 でもボニーは散歩できる嬉しさが先走って、足がうまくついていかない。特にこの1ヶ月、後ろ足の衰えが進み、ハーネスで支えていても足が絡んでよろけることが多い。「ゆっくり、ゆっくり」と言っても、どんどん前進して、すてんと転んでしまう。ボニーはびっくりした顔をしながらも、すぐに起き上がりふたたび勢いよく歩きはじめる。そうするうちに歩くのが辛くなり、無理にでもしばらく伏せをさせて休憩をさせなければならない。

 そんな思い通りにいかない散歩でも、ボニーは子どもの頃から遊んだ公園に来るととても嬉しそうだ。今日はもう何年も行ってなかった水飲み場に、自分から進んで行って水を飲んだ。よく覚えているね! と感心した。
 
 むかし思いっきり一緒に走りまわった同世代の友達はもういなくなったけれども、行き交う若い世代の犬たちと少し触れ合うだけでも、尻尾を振って喜ぶ。特に人が好きだから、飼い主さんたちみんなが可愛がってくれるのが何よりうれしそうで、その表情を見てるだけでぼくの心は和んでくる。

 本格的な春になったらバギーに乗ってもう少し遠くの、思い出がたくさんある公園に出かけよう。みんなボニーを迎えてくれるから。

 
 きょうもまた老いゆく犬と歩くとき
 それだけでいいと心しずまる









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