⑨酒と犬の日々

 酒飲みなので、夜になるとたいていは酔っ払ってボニーと遊ぶことが習慣になっている。遊ぶというか、抱きついて「ボニー!」と喚いているだけなのだけれども、ボニーは一応、尻尾を振って喜んでくれる。

 でもそのままボニーの横で寝入ってしまって、ふと目を覚ますとボニーは自分のハウスに逃げてひとりで丸くなって寝ている。そうだろうな、と思う。子どもの頃、父親が酔っ払って帰ってきて、酒くさい息で自分に近寄ってくるのがとても嫌だったことを思い出す。知らぬうちに父親に似てしまったことが悔やまれるが、仕方ない。

 今日も夕方の散歩から帰って、ボニーにご飯をあげた後、まずは一杯、とウィスキーの水割りを飲んだ。自分へのご褒美。うまく歩けないボニーをバギーに乗せて、近所のちょっと高台にあるO公園まで筋トレのつもりで長い坂を押していき、登りきったらバギーから降ろして歩くのだけれど、それがかなりの力仕事。

 そこは野球場とか、テニスコートとか、梅林とかがある大きな公園で、ボニーは小さい頃から走り回っていたから、いまもうれしくなって思いっきり歩こうとする。だけれど、すぐに足がよろけて転んでしまう。でもとにかく「歩きたい!」という意思は分かるので、片手でボニーのハーネスを支え、片手でバギーを押しながら、ズンズン進む。よろけながらも、ボニーは笑顔で歩きつづける。躓いても、転んでも、ボニーは歩くときはいつも笑顔だ。

 最近、家にいるときは寝てばかりで、ときどき起きたとしても、つまらなそうで笑顔がすっかり消えてしまった。だから散歩した後、ご飯を食べて、「楽しかった!」と言わんばかりの笑顔で満足そうにしているボニーを見ていると、つい乾杯したくなるのだ。ダメ飼い主ながらも、そんな日々を過ごさせてくれているボニーに感謝している。
 
 いまはなんとか歩けているけど、たとえ完全に後ろ足が麻痺して歩けなくなっても、必ず散歩には連れていきたい。車椅子も視野に入れはじめた。何よりボニーがたくさん笑顔でいられるために。


 ほほえみを絶やさぬ犬を見たいため
 明日もともに歩いて飲むぞ




 
 

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