⑭老犬と子供たちがいる風景

 去年の暮れにとても大切な人が急逝した。長く一緒に仕事をした、心から尊敬していた年配の方であった。いまもまだ心の整理がつかないでいるけれど、ボニーと一緒にいることで、かなしみは少しずつ和らいでいる気がする。

 ボニーはぼくの辛い気持ちを察してくれて、落ち込んでボーッとしているとヨタヨタとぼくの傍にきて寝息を立てはじめる。ほんとうにやさしい子だと思う。

 最近よく考えるのは、ボニーを飼いはじめたのが32歳で、それから15年経ったいま、ずいぶん自分は老けたなあということ。飼いはじめた当初はまだまだ自分は体も気持ちも若くて、いろんなことにチャレンジして、走り回るボニーと一緒に成長できた実感がある。いや、人生で初めて飼った犬だから、失敗ばかりする飼い主をボニーが成長させてくれたのだと思う。

 でもいまは、もう走り回ることもなく眠ってばかりいるボニーの晩年の日々をしずかに過ごしたい。犬の介護のことは知らないことばかりで失敗も多いけれど、ずっと支えてくれたボニーを最後まで支えたい。

 そんな気持ちでバギーに乗せて近所の公園に夕方に行くと、たくさんの子供たちが走り回っていて、その中にはときどき若い犬も混じっていたりする。何人かの子供たちは走ってきてボニーを撫でてくれる。そんな風景を見て、楽しいのだけれどなんとなく、胸が締め付けられる。ボニーもそうだろうか。

 今日は昨日より元気に歩いたけれど、帰ったら、後ろ足の肉球から少し血が滲んでいた。水できれいに消毒して、ご飯をあげたら満足そうな顔をして、寝息を立てて眠った。



 一五年ともに眺めた夕空を
 うっすら月は犬へと傾く

 
 


 

コメント