㉙老犬が与えてくれるもの

 3度目の脳梗塞から今日で6日が経った。発作当初、首の傾斜が45度くらいだったのが、いまはもう10度もなくなってきて、ご飯をあげるときも、発作以前のようにまっすぐ下を向いて食べられるようになった。なんていう回復力!

  よし、このまま頑張れそうだ、という嬉しさが募ってくると、不思議とさみしさも募ってくる。そうか、やっぱり老いには勝てないよな、という思い。なんとか生きようとして立ち上がり、首を振りながら「どこにいるの?」とぼくを探しているその姿を見て、なんとも言えないさみしさが心を過ぎる。やはり脳梗塞の影響で、ボニーはそれ以前よりさらに世界がぼやけてきてるのがわかる。
 
  それでも「ボニー!」という呼びかけに、笑顔いっぱいになって尻尾を振る。すごい。人間だったらイライラして周りにあたり散らすはずだ。でもボニーはけっして怒らず、怯えず、笑顔で尻尾を振る。

 なんだろうか。この老いてゆく犬の姿にこみ上げてくる一種の感動は。これは人間界ではぜったいに感じることのない感情だ。これはきっと、ボニーがいま最後の生きる力を振りしぼり、一瞬一瞬にぼくに注いでくれる「やさしさ」への感動なのかもしれない。
 
 くさいけれど、今日はそんなことをなぜか思った1日だった。


 老犬が立ち上がりぼくを探すその眼(まなこ)のなかにぼくはいま在る

  





(耳のガンの手術から回復したノラ友達と今日のボニー)



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