㉞いつまでも残る犬の記憶

 今日は寒いのか暖かいのかよく分からない1日だったけれど、なんとなくボニーは元気がなかった。たぶんただ眠いだけなのだと思う。でも午後の散歩のときは、病気を忘れるくらい元気だった。

 O公園の入口の桜はもう満開だった。バギーにボニーを乗せて長い坂を登りきって広がるその風景に、つい「ボニー、見てごらん!」と叫んでしまった。もちろんボニーは「??」と頭を傾げていたけれど、しばらく桜の木の周りをゆっくり歩いた。

 そのあと家の近くのJ公園を少し歩いたとき、また3人組の女の子たちが「ボニー!」と囲んで撫でてくれた。もちろんボニーは尻尾をいっぱい振っていた。

 そしてバギーに乗せて家に帰るとき、よく会う老夫婦に会った。むかしゴンという立派な黒ラブを飼っていたご夫婦。もう何年も前にゴンは亡くなってしまったけれど、ボニーが小さいころとてもお世話になった。

「ボニーは何歳になったの?」
「もう15歳です。」
「凄いね。ゴンは10歳だったよ。」

 そんな会話を会うたびに重ねている。もちろんボニーはいつも嬉しそうに微笑んでいる。楽しかったゴンとの思い出が蘇るのだろう。ご夫婦もとても懐かしそうにボニーを撫でてくれる。

 ボニーはいまぐっすり眠っている。
 しんとした、しずかな1日の終わり。

 
  いつまでも記憶に残る楽しさに尾を振る老犬に優しさはつのる



 

コメント