㉒犬の笑顔について

 最近、どうもボニーの笑顔が少なくなってきたことが気になっている。特に家にいるとき、むかしのようにぼくが外から帰ってきても寝ていることが多いし、一緒にいてもあまり表情に変化がなく、じっと俯いたままのことが多い。
 
 認知症のはじまりかな、と心配にもなるのだけれど、もしかしたらぼくの最近の接し方に何か問題があるのかもしれない。たとえば、無理に元気を出させようとしておもちゃで遊ぼうとしたり、やたらに心配ばかりして何度も「ボニー、大丈夫?」などと声をかけて頭を撫でたり。

 つい若かったときの元気なボニーを取り戻そうとしてしまっている。本人(本犬?)からすれば、しずかに寝かせてくれよ、もう昔みたいにできないよ、と不機嫌になるのも当然かも。

 犬は人よりも7倍の速さで生きていると、パピーの頃にお世話になったトレーナーに聞いたことがある。だから人にとっての1日は犬にとっての1週間だ。だとするなら、ボニーはぼくの年齢をすでにすっ飛ばして、ぼく以上に老成しているし、別次元のステージで犬生を悟っているのかもしれない。

 今日はそんな気持ちで、あまりボニーのあれやこれやを心配しすぎず、ふだん通りに車に乗せてお医者さんにシャンプーに連れていき、終わった後にふだん通りに迎えにいったら、気落ち良さそうな笑顔で夕焼けの公園を散歩していた。

 よかった、と安心した。もちろん、ハーネスをしっかりと支えて。
 
 
 夕暮れの春の光は昔のまま老いゆく犬の微笑みやすらむ

  

  


 

コメント