㊹ふたたび海で

 今日は先週に引き続き、鵠沼海岸で遊んだ。海辺に住むFさんと会えてボニーは大喜びで海を走った。そして案の定、弱った足では自分を支えられずにステンと転んだ。
 でもボニーは嬉しさですぐに起き上がり、打ち寄せる波にハーネスに支えられながらふらふらとまた入っていく。波に浸かる。あんなに弱っているのになんて楽しそうなんだろうと、Fさんとふたり、太陽を反射する海と戯れるボニーを眩しく、そして切なく眺めた。
  
 あくまで予想だけれども、あと1ヶ月くらいでボニーの右後ろ足は完全に麻痺する気がする。まだ左後ろ足が元気だけれど、そこに負担がグッとかかっているので、左後ろ足もなんらかのトラブルを近く起こすと思う。すでに肉球以外の肌の部分が地面に擦れていて血が滲んでしまっている。

 でも歩けなくなったら、それはそれだ。ぼくは支えていく。

 ボニーにとって海は、きっと自分が帰るべき場所なんだと今日は思った。だからこんなに嬉しいのだ。15年前に僕らの住む人間界に降りてきて、そしてまた自然界へと帰ろうとする犬の本能があるのだ。だからぼくは最後までボニーをこの海に連れてこようと思った。

 なみの端にしゃがむお前をたぐり寄せともに眺めし春の江ノ島




 

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