(96)喪失からの道のり38.最後に

 今日は初夏のような快晴。ボニーが亡くなって四十九日目、さっき夕暮れの青葉にそよぐ初夏の風を一身に浴びた。まるでボニーがすぐ側にいるように。

 思い出す。去年の夏、つめたい水に浸したハーネスと、氷を巻いた手拭いを首に巻いて歩いた。暑いのが苦手なボニーは、なんとか夏を乗り切った。あのときボニーはこれからもずっとぼくと一緒に季節を過ごそうと、とても楽しそうにしていた。

 思い出す。雷が大っ嫌いだったボニーが、留守番中にゲリラ豪雨に見舞われて部屋中で暴れて、ぼくのPCから何からをぶっ倒して、ついにはぼくの大切にしていた『立原道造全集』をボロボロに噛み砕いて、その上でぼくをじっと待っていたのを。

 思い出す。ボニーを初めて車に乗せたとき、ぼくの運転が荒くて、後部座席でボニーが吐いてしまい、ごめんね、と何度も抱き上げたことを。


 今日でこのブログを終えようと思う。たまたま四十九日が4月30日という区切りの日だった。ぼくはこれからどれだけ生きれるのか分からない。でも、ボニーと生きたこと、それだけで、ぼくはもう生きたことに後悔がない。幸福とは、過ぎ去ったあとにこそ感じるんだ。

 この短い間の「たあの老犬介護うた日記」を読んでくださった方々に感謝ばかりです。みなさまの愛犬に捧げる愛情に心打たれるばかりでした。本当にありがとうございました。
 
 最後はうたでなく、詩で終えます。


 
 
 いつか


 みどりゆれる光の門の向こうで
 待っているのは誰だろうと
 ゆっくりと歩みだすと
 
 波の音とともに君が
 門を開きながら
 鼻先をいっぱいに空に向けていた

 ぼくは風を浴びながら
 手を差し伸べた
 いつかと同じように……

 夢から目覚めたとき
 空はまだ夜明け前なのに
 光だけが ひとつ あふれている








 







   






 
 

 

コメント

  1. たあさんへ

    ボニーちゃんとの思い出を毎日読ませていただきました。
    私にも亡くしてしまった大切な愛犬がいました。
    今だにその子のことを思うと心が揺さぶられ、辛い気持ちになることがあります。
    たあさんのブログを読みながら、悲しい別れを昇華していく機会を頂いたように思います。
    今は毎日笑って暮らしています。
    たあさんもどうかお幸せに。
    ありがとうございました。

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    1. ずっと読んでくださり、ありがとうございます。
      そうなんですね。愛犬を失うことはほんとうに辛いですね。でもぼくもなんとか歩き出そうと思います。
      また、ふとこちらに戻ってきて、今度は楽しかったボニーの思い出を綴れればと思います。
      ありがとうございました。

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